魔女と金魚
『魔女と金魚』
中島桃果子
「ああ誰か。
『外は雨だね』
と言う前に、泣いているのですかと、
それすら訊かずに、そばに座って。
叱ったり、励ましたり、
弱いなともどかしがったりせずに」
魔女になりたかった子供の頃を思い出して手に取った本だった。
読みやすくて意外に大人な本だった。
「一途に愛せる素質を持つことと、一途に愛される素質を持つことと、どっちが幸せなのかしらね」
マドカが言ったこの言葉にわたしはどっちなんだろって思った。
たぶん、どっちも持ち合わせてはいないし
どっちが幸せだとも言い切れないと思う。
「何も言わないでただ髪を撫でて。
それがそう、あなたなのかしら?
何も言わずにそっと手を握って。
それがそう、あなたなのなら。
ただあなたの歌を歌ってほしいの。
一緒にまっすぐ歩いていけないと知っていても、
いつか心で抱き合えるその日のために、
儚く舞い上がる泡のような歌を歌って」
失ってから気付くものはいつだって何よりも大切なもので
けど、失わないと大切なものだったことに気付かない。
それはきっと大切なものをちゃんと見ていなかったからだと思う。
誰かこの歌を歌ってくれないかな。
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