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2009年8月

2009年8月23日 (日)

きいろいゾウ

『きいろいゾウ』
西加奈子

こんな夫婦に少しだけ憧れてしまう。

夫の名前は武辜歩(ムコアユム)、妻の名前は妻利愛子(ツマリアイコ)。

そして二人はお互いをムコさん、ツマさんと呼び合う。

ムコさんは小説家をしながら老人ホームで働いている。そして背中には大きな鳥のタトゥー。
ツマさんは周囲の植物や動物などの声が聞こえてしまうとても不思議な人。

二人は都会から田舎に移り住んだ若い夫婦。

普通の夫婦。優しさに溢れた夫婦。

だけどムコさんには秘密がある。

背中に鳥のタトゥーをいれるほどの秘密。

けどムコさんの秘密はツマさんにとったら今の生活を変えてしまうほど重大なこと。

後半はずっと胸が苦しかった。

それでもすらすらと読めてしまうのは会話のリズムがいいから。


必要なもの。

朝食のトマトと岩塩
そば殻の枕
お香「ピーターパン」のにおい
健康サンダルとその刺激
クールの目薬とその刺激
キン肉マンのどんじゃら
たくさんのバスタオル
風呂あがりのビール
階段が軋む音
緑の升目の原稿用紙
黒と木目柄の万年筆(メーカー不明)
第四小学校相撲大会でもらったトロフィー
青い目覚まし時計とその微妙なズレ
豚毛のブラシと歯ブラシ
針がレコードを削る音
コーヒーを煎るにおい
ほうじ茶を沸かす儀式
抽選で当たったディレクターズチェア
カエルの鳴き声(大合唱に限る)
明け方の空の色
裏山を吹く風
欠け始めた月

ぼくのつま


なんていうか…切ない。

必要なもの「ぼくのつま」と言われたい。

2009年8月22日 (土)

流れ星が消えないうちに

『流れ星が消えないうちに』
橋本紡

胸がずっと苦しい。

読み始めから読み終わった今も胸が苦しい。

よくわからない気持ちで苦しい。

夕食の天ぷらで苦しいわけじゃない。

と思う。


恋人を亡くした奈緒子と親友を亡くした恋人の巧。

突然、二人の世界からいなくなってしまった加地。

いなくなってしまったから繋がった二人。

二人の思いと日常を交互にいなくなってしまった加地を思い語る。

けど二人はお互いに加地の名前も話も口にはしない。

二人は時々いなくなってしまった加地を通して触れ合う。

涙が出そうで出ない…

彼等の周りの人が面白いから…。

流れ星に願いをかけるほど未来を生きられる。

亡くなってしまった人を身近に感じたい思いが星にさせる。

亡くなった人は星になって見守ってくれる。

星になっていつまでもそばにいてくれる。

そう思うだけで胸の苦しさが軽くなる気がする。

だから空を見上げてしまう。

ごはんも美味しく食べれてしまう。

この人の本を読むとお腹が減る。

ご馳走様です。

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